裁判員制度、課題は 弘前大でシンポ

 県内で初めてあった9月の裁判員裁判を題材に、その経験から改めて市民と裁判員裁判とのかかわりを考えようというシンポジウムが24日、弘前大であった。実際にこの裁判にかかわった裁判員経験者や青森地検の検事らも参加し、当時の様子もまじえながら課題などを話し合った。

 同シンポは裁判員裁判がスタートしたのを機に同大で10日から毎土曜に開いている5回連続の講演会・シンポ「裁判員制度と世界の司法動向」の一環。市民の司法参加の意義を考えて世界各国の司法制度なども学ぶシリーズで、今回は身近な事例として青森での裁判がテーマになった。

 パネリストには、9月の裁判に裁判員としてかかわった牧師の渋谷友光さん(45)や青森地検の郷政宏検事をはじめ7人が参加。同大の学生や市民ら約60人が7人の話に聴き入った。

 渋谷さんは裁判員としての経験をもとに「多くの人に伝えたいのは(裁判員制度が)本当に始まったということ」と強調。「裁判員候補者に選ばれた時点で事件に関するオリエンテーションなどがあると、心の準備ができるのでは」と述べ、市民が裁判に参加する際の心の負担を軽くする工夫を提言した。

 また、9月の裁判は「検察側の立証がショーのようだった。弁護側とは差があったが、そのような場合は(裁判員は)どう公正に判断すればいいのか」などの意見もパネリストから出された。県弁護士会の猪原健弁護士は「プレゼンはいかに共感が得られるかが問題。冒頭陳述で事件を具体的に説明することなどを(裁判員裁判についての県弁護士会の)検討会でも考えている」などと答えた。

 このほか、裁判員裁判が始まる前から課題となっている裁判員に対する守秘義務の負担の大きさに関して、「罰則については今後見直されるだろう」との意見や、青森の裁判員裁判での裁判員が男性5人女性1人だったことに対して、男女比や年齢などのバランスについてたずねる聴衆もいた。

 聴衆の1人で同大人文学部の長尾佳織さん(20)は「裁判員経験者の生の声を聞けたのは新鮮だった。選ばれたらぜひやってみたい」と話していた。

(2009年10月26日 朝日新聞)