【なぜ本は売れないのか】 (中) 1000万種類超、ネット書店は2ケタ成長

■新しいシステム

 書店の棚は、各出版社が次々に刊行する新刊で飽和状態になっている。そのサイクルは早くなる一方で、じつに4割もの書籍が、誰の手にも渡らずに返本されている。明らかな異常事態が常態化してしまっている出版界だが、返本率を引き下げるための試みも動き始めている。

 「責任販売制」という新しいシステムがそのひとつだ。書店は取次会社を経て出版社から本を仕入れているが、従来の「委託販売制」では、出版社と取次会社が“配本”の主導権を握る代わりに、売れなかった本は仕入れ値と同額で返本できた。

 新システムでは、書店に仕入れの裁量権が委ねられる。返本となった場合、出版社は定価の3~4割でしか引き取らない。その代わりに、書店のócb取るマージンは委託の約1・5倍にあたる35%に上がる。

 現在、一部の商品に限られるものの小学館、講談社など10社がこのシステムを導入している。小学館は7月に刊行した児童向け書籍「くらべる図鑑」の初版7万部のうち5万6000部を責任販売とした。すぐに完売し、1週間後に増刷となった4万部も大半を責任販売にあてた。

 どちらのシステムを選択するかは書店の判断によるが、小学館マーケティング局の市川洋一ゼネラルマネジャーは「書店は売る努力をするし、出版社も企画力を磨くはず。出版界の意識革命につながってほしい」と話す。同社では11月末に発売する「世界大地図」も、初版3万部のうち2万5000部を責任販売にする予定だ。

■大型化か淘汰か

 出版不況のなか、書店の数は年々減ってきた。しかし、意外にも書店のフロア面積は増えている。出版社「アルメディア」の調査によると、平成19年5月に約1万7098店あった書店は今年5月の時点で1万5765店に減少した。だが売り場面積は137万坪から142万坪へ広がった。大型化と淘汰(とうた)が同時に進んでいる状況だ。小さな書店は徐々に消費者のニーズに応えるのが難しくなり、書店がスーパーマーケット化しているといえる。

 そんななかで、ネット書店も急成長している。アマゾン・ジャパン書籍統括事業本部の渡部高士企画・編集本部長は「2000年11月のサービス開始以来、書籍の売り上げ推移は右肩上がりの2ケタ成長を続けている」と話す。

 「1000万種類を超える品揃(ぞろ)え」を豪語するアマゾンは、千葉県の市川市と八千代市にある物流センターに加えて、8月には大阪府堺市にも新物流センターを開設した。

 渡部本部長によると、ネット書店の長所は(1)店舗面積に制約がないため在庫に厚みがある(2)検索機能で読みたい本を即座に見つけ出せる(3)予約ができて発売と同時に入手できる(4)24時間営業-など。同書店のホームページには月間約1400万人が訪れるという。

 パソコン画面という“無限大の売り場”を持つネット書店も、本の洪水の前で立ちつくす消費者への、回答のひとつであることは間違いない。

(2009年9月22日 MSN産経ニュース)