原発事故の苦悩 朗読劇で
東京電力福島第一原発の事故に苦しむ被災地の思いを伝えようと、福島、長崎の市民劇団が30日、福岡市南区の平尾バプテスト教会で朗読劇を合同公演した。
出演したのは福島県郡山市の郡山演劇研究会「ほのお」と、昨年亡くなった脚本家、市川森一さんが創設した長崎市の「長崎座」。ほのおの公演を見た長崎座の演出家・青井陽治さんが合同公演を呼びかけた。
演目は「愛(いと)しき福島へ」と「それゆけ安全マン!?」。
「愛しき――」は、被災地の青年の目を通し「除染作業だけで安全なのか。本当のことを知りたい」という仮設住宅のお年寄りや、「心のどこかで、いつかこの代償を払う時が来ると思っていた」と話す原発近くの旅館の女将(おかみ)ら、日々放射線の不安にさらされる人たちの嘆きやため息を描いた。
「それゆけ――」では、チェルノブイリなど過去の原発事故を挙げ、政府や首長、科学者、避難者らそれぞれの立場から「安全」を語らせた。最後は「真実以外に未来への道を示すものはない」と締めくくり、事故に関する十分な情報開示の必要性を説いた。
長崎県壱岐市から訪れた神山美奈さん(50)は「今の被災地を学び、成長していくことが本当の支援につながるのでは」と話した。
「ほのお」メンバーで作・演出を担当した町聡子さんは「(原発事故で)初めて直面する問題ばかり。福島を語り継いでいくことが大切だ」と訴えた。青井さんは「日本ではどこにいても原発にかかわらずにはいられない。知らなかったことを知る努力をしなければならない」と話した。
(2012年1月31日 読売新聞)