点字の聖書:甲南女子大・荒木さん、挑戦 指先集中、陶芸作品解読へ /兵庫
西宮市出身で聖書の作品で知られる陶芸家、荒木高子氏=04年死去=の作品「点字の聖書」の解読に、全盲の甲南女子大学文学部英語英米文学科4年、荒木温子さん(22)が挑んでいる。
「点字の聖書」は開いた聖書の中心を引き裂いた状態を表現した陶芸作品。知人が点訳した文字を薄い陶土に写し、1枚ずつ重ねるという高度な技術を用いている。85年の日本陶芸展に出展された後、遺族らが昨年11月、三田市のアトリエで発見し、他の作品9点と一緒に同大学に寄贈した。
これまで点字の内容は判明していなかったが、来年予定している修復作業の前に内容を解読しようと同大学が企画した。
荒木さんは難病の先天性黒内障。講義で配布される資料は「音声ソフト」で文章を音声に変換するなどして学んでいる。
「点字の聖書」は右ページの損傷が激しく、左ページの18行の解読に挑戦。点字がつぶれたり間隔が一定でないため、友人の人間科学部総合子ども学科4年、今井希さん(22)に位置を教えてもらいながら、指先で点字を読み取る作業を続けている。荒木さんによると、点字は日本語で「わたしたちはアブラハムの子孫」「あなたがたに自由を」といった文字が刻まれているという。これまでに半分の内容が判明した。
同大学はキリスト教関係者に判明した文章と聖書を照合してもらい、聖書のどの一説を作品にしたかを特定する。修復後は図書館の閲覧室で公開する予定。荒木さんは「崩れている部分があり読み取りは難しいが、どの部分を作品にしたのか気になります」と話している。
(2011年2月26日 毎日新聞)