原発労働の実態知って
■報道写真家・樋口さん講演「貧困や差別 背景に」
原発労働者の実態を40年近く取材してきた東京都在住の報道写真家、樋口健二さん(73)が29日、「原子炉の中の真実」という題名で福岡市中央区の福岡聖パウロ教会で講演。「長崎、広島を背負っている日本人が、原発の実態についてきちんと知るのは国民の課題だ」と、原発について問題意識をもつよう訴えた。
樋口さんは77年、福井県の敦賀原発の炉心部で重装備で働く労働者のスクープ写真を雑誌に発表、大きな反響を呼んだ。その後も、日本各地や台湾の原子力施設、白血病やガンに苦しむ原発労働者や反原発運動の写真などを発表しており、欧州や北米でも写真展を開いている。
この日の講演で樋口さんは、作品をスライドで映しながら、自身が炉心付近を歩いたときのことを詳しく報告。「内部はパイプの林で、機械では点検、整備ができない。人間に頼らざるを得ない」と話した。また、たくさんの原発労働者に会って話を聞いた経験から、「原発の現場から現場へ渡り歩く労働者が多かった。貧しかったり差別される人が原発へ追いやられている」と話した。
(2011年1月30日 朝日新聞)