赤ちゃんポスト:利用51件 匿名継続認めず――熊本県検証会議
親が育てられない子供を匿名で受け入れるために熊本市の慈恵病院が設けた「赤ちゃんポスト」(こうのとりのゆりかご)の長期的課題を検討してきた熊本県の検証会議(座長=柏女(かしわめ)霊峰(れいほう)・淑徳大教授)は26日、最終報告書を蒲島郁夫知事に提出した。預けられる子どもの権利を考慮した場合、匿名を続けることは認められないと指摘。周囲に知られないまま相談や出産を受け入れつつ、実名での支援につなげる「シェルター」を各都道府県に置くことなどを提言した。
報告書は「シェルター」を各都道府県の産婦人科病院に1カ所程度設置することが必要と指摘。職員の相談能力などの向上や情報を共有するため、シェルターを連携させる組織の設置も国に求めた。
報告書によると、ポストが設置された07年5月から今年9月末までの利用は51件(人)で、このうち身元が判明したのは39件。母親の居住地は熊本県を除く九州が13件と最多だったが、関東11件、中部6件と全国に広がっている。母親の年代は20代が約4割を占め、児童相談所が援助中のケースもあった。
預けに来たのは母親が最も多かったが、1人での来院は13件にとどまった。「戸籍を汚したくない」と祖父母が訪れた例もあり、利用理由では「戸籍に入れたくない」(8件)が最も多く、生活苦(7件)と不倫(5件)が続いた。
51件のうち、再び家庭に戻ったのは7件。30件は施設などで育てられ、1件は特別養子縁組が成立した。
(2009年11月27日 毎日新聞)