(2007年・日本/監督 佐々部清)
原爆投下から13年後の広島。母と2人で静かに暮らす皆実(麻生久美子)は、会社の同僚・打越(吉沢悠)から愛を告白される。しかし、未だ癒えない被爆の「傷」と、生き残った罪悪感に苦しむ皆実は、素直に幸せを受け入れられない。やがて、原爆症の症状が皆実の体を蝕んでいく。
そして現代。戦時中に疎開し、そのままおば夫婦の養子となっていた皆実の弟・旭(堺正章)は、同居する娘・七波(田中麗奈)に内緒で広島へ向かう。心配する七波は、父の後を追ううちに、家族や自分のルーツと向き合うことに……。時代を超えた2人の女性を通し、被爆者たちの背負ってきた歴史と、今日に至るまで連綿と続く悲劇の連鎖を見つめる。
原作は、これまでの「原爆漫画」とは一線を画し、鮮烈な印象を与えたこうの史代の同名コミック(手塚治虫文化賞新生賞、文化庁メディア芸術祭漫画部門大賞を受賞)。その柔らかなタッチを忠実に映像化。重いテーマを描きながら、原作同様、画面には透き通った爽やかさが溢れる。
被爆直後の生々しい惨状も、「戦争」「平和」といった言葉もほとんど出てこない。しかしかえって、のどかで淡々とした描写に、一発の爆弾が残したあまりにも大きい傷痕の深さに気付かされる。
原作にはなかった皆美の台詞「(原爆は)落ちたんじゃない。落とされたんよ」に、構想以来3年がかりで作り上げたという佐々部清監督の底知れぬ情熱を見る思いがする。
(2007.9.15 キリスト新聞)
原爆投下から13年後の広島。母と2人で静かに暮らす皆実(麻生久美子)は、会社の同僚・打越(吉沢悠)から愛を告白される。しかし、未だ癒えない被爆の「傷」と、生き残った罪悪感に苦しむ皆実は、素直に幸せを受け入れられない。やがて、原爆症の症状が皆実の体を蝕んでいく。
そして現代。戦時中に疎開し、そのままおば夫婦の養子となっていた皆実の弟・旭(堺正章)は、同居する娘・七波(田中麗奈)に内緒で広島へ向かう。心配する七波は、父の後を追ううちに、家族や自分のルーツと向き合うことに……。時代を超えた2人の女性を通し、被爆者たちの背負ってきた歴史と、今日に至るまで連綿と続く悲劇の連鎖を見つめる。
原作は、これまでの「原爆漫画」とは一線を画し、鮮烈な印象を与えたこうの史代の同名コミック(手塚治虫文化賞新生賞、文化庁メディア芸術祭漫画部門大賞を受賞)。その柔らかなタッチを忠実に映像化。重いテーマを描きながら、原作同様、画面には透き通った爽やかさが溢れる。
被爆直後の生々しい惨状も、「戦争」「平和」といった言葉もほとんど出てこない。しかしかえって、のどかで淡々とした描写に、一発の爆弾が残したあまりにも大きい傷痕の深さに気付かされる。
原作にはなかった皆美の台詞「(原爆は)落ちたんじゃない。落とされたんよ」に、構想以来3年がかりで作り上げたという佐々部清監督の底知れぬ情熱を見る思いがする。
(2007.9.15 キリスト新聞)