(2006年・アメリカ/監督 デイビス・グッゲンハイム)

 世界教会協議会(WCC)の声明によると、温室効果ガスの影響により、「ケニア人の貴重な水源であるケニア山やキリマンジャロ山の雪や氷が消えてなくなり、干ばつと深刻な嵐が交互に起きている」という。温暖化といえば、近未来の惨劇を映像化した「デイ・アフター・トゥモロー」が記憶に新しいが、鑑賞者へのインパクトという面では本作の方がはるかに大きい。

 主人公は、アメリカの元副大統領アル・ゴア。地球が瀕する数々の危機的状況に心痛めた彼は、「これは政治問題ではなく、人類としてのモラルの問題だ」として、世界中でスライド講演を開いてきた。彼にとって環境問題は、大統領選での落選、息子の交通事故を通して示された召命とも言うべきライフワークとなっている。日本の一部政治家が口にする「マニフェスト」とは重みが違う。

 スライドには、近年立て続けに起きる異常気象と、「聖書の黙示録を思わせる」その惨状が映し出される。さらに、グラフやアニメを駆使したプレゼンは、講演会場の聴衆と一緒に聞き入ってしまう説得力がある。

 映画化を進めたのは、ゴアの講演に感銘を受けた「グッド・ウィル・ハンティング」のローレンス・ベンダーと、「グッドナイト&グッドラック」のジェフ・スコル。監督は「トレーニング・デイ」の製作総指揮デイビス・グッゲンハイム。この作品が、世界で最大の温暖化要因を排出ながら、自国の経済的理由で京都議定書から離脱したアメリカで作られ、社会的反響を呼んでいることに大きな意義を感じる。

 最後に列挙される「わたしにできること」の一つ。「人々が変わる勇気を持てるように祈りましょう」。

(2007.1.13 キリスト新聞)